千代田線の人

毎朝通勤中、千代田線で一緒の車両になる

印象的なお姉さまがいる。

印象に残っている理由は2つあって

 

1つめは、煙たい顔をされたことがあるから

冬の寒い日、もけもけのコートを着てシートに座った。

すると隣からとんでもない視線と、私と接触している腕を手ではたく音がする

何かしたかな、と思って隣を見ると、どうやら私のもけもけコートが自分のコートに

付着することを嫌がっていた

確かに申し訳ない。これ、もけもけ散布させそうだし

猫の毛みたいにつきそうですよね、わかります。

でもね、何度も手ではたかれているから分かると思うけど、

このもけもけは抜けないタイプのやつなのよ

 

 

強すぎる視線を注がれたまま、会社の最寄りまでずっと窮屈な思いをした。

 

 

2つ目は、ひと際目を引くファッションであること

目をしばたかせたくなるような、鮮やかなパープルのコートに

耳が伸びてしまいそうな、大きなシャネルマークのチカチカピアスぶらさげて

鉛筆の芯みたいに細いピンヒール、虎柄を添えて

クリアのクマちゃんがくっついた大きなスマホケース(私ビューだと生贄のクマ)

爪は派手に施されている

なみなみしている漆黒ヘアー

あと、なんかいつも怖い顔している(気がするだけなのかな…)

 

人を見た目だけで判断するのはもったいないので

パーソナルな部分を否定したくない自分と戦うけど

もし、とても親切な人であるなら、見た目で損しすぎだと思う。

 

 

この2つの理由で、この日から心の中でメデューサと呼んでいる

 

 

本当に毎朝会う。

そして、メデューサが前に立っている座席は必ず空く。

どの人がどの駅で降りるか覚えてるのだね

 

今朝も座るメデューサがいた。

メデューサは毎朝スマホゲームをしているのだけど

特に今日は、長く派手な爪で画面を激しくカチカチ叩く音が

心地よく読書をしている私の空間に捻転してきて、耳障りでしばらく見てしまった

 

 

目の前に座るその人が画面に落とす目は、

激しい指の動きや鮮やかな服装と反して、空っぽだった

本当に空っぽの目をしていて

 

それをじっと見ていると、

何か分からないけど泣きたくなるくらい、ひどく哀しい気持ちになった